#029
退路を断ち、変化を起こす。

1 Posted by - 2016年5月2日 - PICKUP, REPORT

160501_BM#29メインリサイズ

背中を丸く曲げ、ヘッドフォンから流れてくる音楽に集中する。少し経つとヘッドフォンを外し、キーボードでメロディを奏でる。2016年に入ってから、藤岡のこんな光景がよく見られるようになった。ヘッドフォンから聴こえるのは、彼自身が制作しているRaftの新曲。そう、作曲にいそしんでいたのだ。

藤岡自身にとっては、初と言っても過言ではない作曲。感想を聞くと、はにかんだ笑顔で「いやー」と前置きして「曲をつくる人はすごい」と一言。しかし、決して自分の力を卑下しているわけではない。純粋に作曲をする人をリスペクトすると同時に「自分にもできるはずだ」という確信が込められている気がした。「これまでは『自分に作曲は向いていない』と決めつけていました」と話す彼が、なぜ、このような行動を起こしているのか。根底にあるのは、リーダーとしての自覚の変化だった。

「Raft一本で勝負しよう」。そう決めた彼は、日本国内で活動していたもうひとつのバンドを脱退した。自ら退路を絶ったのである。「その瞬間、アタマがクリアになった気がします。『これをしないと』『あれもしなきゃ』と、自分がするべきこと、なりたい姿が見えてきました」と藤岡は話す。新曲の制作もそのひとつ。また、今回のツアーでは、藤田に変わるギタリストをスポットで迎えることも決めた。Raftのミュージックコンセプトは「LIBERAL MUSIC」。様々なミュージシャンとの融合もアリ。小浦とギタリストを探した結果、柔軟性や反応の速さなどの面で定評がある藤井義順の加入が正式に決定。小浦、藤井と一緒にスタジオで練習した時は「ノリ(藤井)のプレイが印象的でした。純粋に『今までの曲がこうなるのか』といい意味の驚きが連続でありました」という。

日本では桜が咲き誇る4月。そして、夏を迎える準備に差し掛かる5月。再びRaftはバンコクで決戦の舞台に立つ。「音楽に携わる全ての人に『コイツらをフェスに呼んだり一緒にプレイしたりしたら絶対におもしろい』という印象をもたらしたいですね」と藤岡は意気込みを話す。過剰にシリアスになったり、変におちゃらけたりするわけでもなく。自然体の覚悟は、灼熱の太陽が照りつけるバンコクでどんな花を咲かせるのか。

160501_BM#29_挿入リサイズ