♯014
混血バンド、結成へ
~誕生、そして処女航海へ~

3 Posted by - 2015年5月7日 - REPORT

2015年3月30日。タイのドンムアン空港に到着した藤岡は、足早にスタジオへ向かった。目的は、ナットとの初顔合わせ。そして、プロモーションで使う曲のレコーディングだ。初めて聴く彼女の歌声は?リズム感は?技術だけではない。音楽と対峙する姿勢は?ミュージシャンとして運命を共にできる存在か?脳裏をよぎる数々の不安を押し殺しながら、彼はスタジオに到着した。

扉を開けた藤岡の前に現れたのは、ピンクの髪と背中にある象のタトゥーが印象的な一人の女性。ナット本人だ。だが、出会いの喜びに浸る暇はない。さっそく本題に突入した。神経を研ぎ澄ませてデモ音源のメロディーを拾い、全身全霊を傾けて歌うナット。声の質がいい。フェイクの入れ方もうまい。“いけるかもしれない!”潜在するポテンシャルを引き出すために数々の指示を出す藤岡。彼女もそれに応じつつ、アイデアを出す。タイ語、英語、日本語の3ヵ国語が飛び交う中、曲は分刻みに進化していった。もちろん初対面で全てが完結するほど曲づくりは簡単ではないが、事前に彼が設定した“メロディーにしっかり声を乗せて、曲のイメージを明確にする”という目標は軽々とクリアできた。

渡航前に“曲が生きるか死ぬかはヴォーカル次第だ”と感じていた藤岡。約3時間にも及ぶレコーディングを終えてスタジオを後にした時、彼の中に出た結論は“ナットを迎えたらおもしろい勝負ができる。一刻も早くライブをしよう”。混血バンド、誕生の瞬間だった。その名前は“Raft(ラフト)”。2015年5月24日と26日、Raftはバンコクで処女航海に出る。