Raft・バンコクライブのほとんどを観に来てくれる日本人がいる。濤川憲紀さん、通称「ナミさん」だ。年代を問わずタイで活動する日本人ミュージシャンからの信頼を一手に集めるナミさんは、どのような人物なのか。
———音楽に興味を持ったきっかけは?
音楽が好きになったのは中学生の時です。ギターが身近にあり、弾き語りをするようになって。それからいろいろなジャンルを聴きました。その中で大好きだったのがジャズやクロスオーバー。渡辺香津美や日野皓正、PRISMなどを聴いていましたね。老舗のライブハウスにも結構通いました。
—タイに来たきっかけは?
タイに来たのは2002年です。日本での仕事や生活に嫌気が差して「とりあえず国外に行こう」と、何も考えることなく、逃げるような感じでしたね。こちらに来た時は音楽とは離れた生活を送っていました。でも、タイでの生活が長くなるにつれて「音楽をやりたい」という日本人の知り合いが増えていったのです。自分自身もアカペラのグループに入ったり、デュオで活動したりするなど、再び音楽と触れ合うようになっていました。その中で「自分発信でライブをしよう」と思い立ち、始めたのが2007年の「J-LIVE」です。ステージに立つ条件は日本人が一人以上いる形態であること。小さなライブハウスで開催したのですが、観客が180人くらい来ました。そこから派生して新たに企画したのが「Fujiyama Night」です。こちらは日本の曲をカバーするのであればタイ人でも大丈夫、という条件にしました。現在、どちらのイベントも続いています。私自身も出演して弾き語りなどを披露する時がありますよ。
—イベントを続ける理由は?
開催するのは純粋に楽しいし、いろいろな人やミュージシャンとつながることができます。これまで多くの人と出会い、話す中で、私のミュージシャンに対する見方も変わってきました。音楽が好きなら、メジャーデビューしていようがしていまいが関係ないと思っています。「音楽が好き」という方と一緒に私も楽しみたい。「やりたい」という思いが何よりも大切だし、そんなミュージシャンの気持ちが人の心を動かすのだと思いますから。