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目からウロコの、無茶ぶりハードロック。

6 Posted by - 2014年7月8日 - REPORT

猶予、わずか1時間。

バンコク市内にあるハードロックやメタルを主体としたライブハウス“THE ADCK PUB”。藤岡と小浦が飛び込み、出演交渉をする。苦戦は必至と覚悟していたが、あっさりOK。だが数秒後、困難が訪れたのである。「演奏するのはSystem Of A Down のToxicity。1時間後だよ」。「え?たったの1時間?!」。ハードロックは彼らの守備範囲外。与えられた時間が短すぎる。しかし、タイに来た目的は音楽で異国の人々と通じ合い、自身の血と肉にすること。ただコピーするだけでは目標未達なのだ。

窮地と覚悟。

YouTubeで曲を検索し、一心不乱に聴いてコードを探す二人。その後、彼らは二手に分かれた。外に出て聴覚を極限まで研ぎ澄ませ、ベースを弾きながらフレーズを構築する藤岡。イヤホン越しに聞こえてくる音を譜面に落とし込み、エアドラムで体に叩き込む小浦。体得するスピードは“さすがプロ”と舌を巻くほどだったが、いかんせん時間がなさすぎる。あれよあれよという間にタイムリミット。しかしステージに立った二人の顔には、決意が満ち溢れていた。“やり切るのはプロとして当然。必ず何かを得てステージを降りる”と。

まだ見ぬ力を感じた3分30秒。

演奏時間は約3分30秒。藤岡は「2秒くらいにしか感じなかった」と振り返る。だが、手ごたえは大きかった。「なぜか、演奏中にギタリストが考えていることが分かりました。言葉は通じないのに、不思議な感覚です。磨くべき部分は多いけど、自分のベースは言葉の壁を越える。音楽を始めた時に夢見たワールドツアーに少しだけ近づけた気がします」と話す。小浦も「発見があった」という。アドリブがあってこそのコミュニケーションだと考えていたが、実はジャンルも関係なし。数分間で音楽の新たな力を見出せたのである。通じ合えたと確信しているのは、現地のミュージシャンもそうだ。終了後、彼らから二人に握手を求めていたシーンが、全てを物語っている。